iOS17のSafariに、「高度なトラッキングとフィンガープリント保護」という機能が追加されました。
どうやら、プライバシーを守ってくれる機能のようですが、
- フィンガープリントとは、何を保護するの?
- トラッカーとの違いは?
- フィンガープリントの危険性は?
「ちょっとデジタル苦手…」という方向けに、情報セキュリティ資格を有するIT管理プロがわかりやすく解説します。
この記事をお読みいただけば、Safariでの「プライバシー情報の取り扱われ方」を知ることができます。
Safari「フィンガープリント」とは?
フィンガープリントは、「デジタル上の指紋」という位置づけです。
主に、次のような3つの情報のかたまりを合わせたものを「フィンガープリント」としています。
情報の種類 | 内容 | |
---|---|---|
ブラウザ | → | Safariのバージョン、言語、機能拡張など |
デバイス | → | iPhone機種、バージョン、画面サイズや色など |
場所 | → | IPアドレス、公衆Wi-Fi名などから位置の特定 |
主に、サービス提供者が「同じ人物であると判断するための目印」として活用が進んでいます。
Safari「フィンガープリント」トラッカーとの違い
- トラッカー:デジタル上の情報を収集する役割
- フィンガープリント:iPhoneが持つ情報のあつまり
なお厳密にいうと、「トラッカー」と「トラッキング」も異なるものです。
言葉だけだとわかりづらいので、図を用いて説明してみます。
- フィンガープリント:iPhoneの情報のあつまり
- トラッキング:デジタル上の行動を追跡
- プロファイリング:①②を分析した情報
つまり、「トラッカー」はデジタル上の玄関(Safari)で待ち構えており、「①フィンガープリント」や「②トラッキング」といった情報をあつめます。
そして、検索している内容や訪問サイトから「好みや関心ごと」を分析、且つiPhoneを使う環境から「同じ人物であるか?同一性」を特定したものを「③プロファイリング」として保存します。
トラッカー、トラッキングについて詳しくは、別記事でも解説しています。
Safari「フィンガープリント」が欲しい2つの理由
デジタル上のサービス提供者は、なぜフィンガープリントを欲しがるのか?主な理由です
- 個人へのアプローチ:ビジネスにつながる情報のみを届けたいから
- 全体のアプローチ:あなたと同じ考えの人に"刺さりそうな"情報を知りたいから
まず、「あなたのことは私たちが一番よく理解しています!だから、あなたの役に立つ情報のみしかお届けしません!」としたいからです。
例えば、iPhoneを持っていない人へ「iPhoneのケースや充電器が超お得!」なんてすすめられても、誰も買いませんよね?そのため、届ける情報の質をアップしたいという目的です。
次に、あなたと同じ考え、つまりプロファイリングが似ているユーザーへ「どうやってアプローチしようか?」有効な方法を探しています。
このようなプロファイルアプローチの流れは、Safariを開いた瞬間からスタートしています。
Safariのプライバシーレポートを有効にしてみてください。かなり詳しくチェックすることができますよ。
【関連】Safariプライバシーレポートの見方は、コチラで解説しています。
このようなデジタル商戦が繰り広げられている実態から、自分のプライバシーがどのように取り扱われているのかを知っておいた方がよいでしょう。
Safari「フィンガープリント」の危険性
個人を特定され、気づかずに悪用されているかもしれません。
例えば、「まちがえて詐欺SMSのリンクを開き、フィッシングサイトにアクセスしてしまった!」うっかりさんのケースで説明します。
デジタル詐欺師はフィンガープリントから、次のようなプロファイリングをゲットしました。
- iPhone 7の機種を使っている
- iOSバージョン「15.7」と古い
- やたら「iPhone 最新 安い」を検索している
すると、「とりあえず "最新のiPhoneが当たる!" 詐欺SMS送れば、引っ掛かるんじゃね?」と考えて詐欺SMSを送りつけてくるかもしれません。
あなたも、次のようなお心当たりはありませんか?
- 周りの人より、詐欺SMSが届く回数が多い
- ネットで検索すると、毎回怪しいサイトにたどり着く
- アプリ内、毎回同じような怪しい広告が表示される
もしかしたら、フィンガープリントで「ターゲット化」されているかもしれませんが、悪用されていることにすら気づきようがないことが一番の問題ですね。
Safari「フィンガープリント」変更するには
もし、「悪用されているかも…いまのフィンガープリントを変えたい!」という方向け、効果的な方法です。
- iPhoneを機種変更する
- 使っているブラウザを変える
- VPNを使う
ただし、一度収集されたフィンガープリント、またプロファイリングの内容は変えられません。
そのため、上述した悪用例「ひんぱんに詐欺SMSが届く」は解消されませんので、悪用されているシーン別の安全対策が必要となるでしょう。
【関連】詐欺SMS対策に効果的なiPhoneアプリ|IT管理プロおすすめ
Safari「フィンガープリント」は使われ方次第
Safariのプライバシー保護として追加された、「フィンガープリント」について、若干リスクよりの考えで解説してみました。
自身が知らぬうちにデジタルで取得、追跡行為をされていたら「気持ちわるい」という方が大半でしょう。
ですが、なんとなくのネット検索から「これだ!この情報が知りたかった」という経験もされているはずです。
このように、"自分の思考のたな卸し、潜在ニーズを知るためのツール" として活用されているのであれば、多少は納得できるのではないでしょうか。
現在このフィンガープリントを、実質上「パスワードに代わるデジタル上の本人確認証」とする研究もすすめられいるそうです。
「パスワードのないデジタルの世界」実現に向けて、今後の活用が期待されますね。